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投稿日:2022年02月1日

クレームを宝にする

過ちは潔く認める

仕事でかかわっていた通信教育会社が、ある書籍を完全にコピーしてテキ
ストを作成していたということがありました。
当時、それを発見した出版社の担当編集者の方からクレームの電話が入り、
たまたま、わたしがその電話を受けたのです。

その日は、偶然にもコンサルタントが通信教育会社の社員教育に訪れてい
たときでした。ちょうどいいタイミングだったので、その件について相談す
ると

「うかつに答えてはいけません」

という回答。
そのコンサルタントには、1日で30万円を支払っていたのですが、そんな
バカバカしい回答しかもらえなかったことが、いまでも強く記憶に残ってい
ます。

自分でなんとかしようと、直接出版社に電話をかけて

「申し開きはできません。そのとおりです」

と答え、

「会社が潰れない範囲なら、何でもします」

と、担当編集者の方に伝えたのです。
「潰れない範囲」というのは、伝える側の懐次第です。ですから、

「潰れない範囲のなかで、何でもします」

と答えました。

「内容が酷似している」

と言われて調べてみると、100%丸写し。
漢字がひらがなになっていた程度で文面も変えていないような状態だった
ので、テキストを見て、わたしも呆れてしまいました。
そのうえで、

「間違いありません。100%丸写しです」

と答えました。
一度電話を切ったあと、1時間後に担当編集者の方から着信がありました。
すぐに

「申し訳ありません。すぐ飛んでいきますので!」

と伝えたところ、

「来なくていいですよ。代わりに通信教育の生徒さんに、書籍の宣伝のチラ
シを入れてくだされば」

と言っていただけました。
訴訟に発展してもおかしくない案件だったので、本来なら考えられないよ
うなやりとりです。

潔い謝罪は、評価される

普通であれば、100%丸写しとわかれば顔面蒼白になり、言い訳ばかり
が口から出てくるはずです。テキストを制作する段階では、まだ仕事にかか
わっていなかったので、言い訳できることは山のようにありました。
でも、こちらの過失を潔く認めたのと同時に、

「ここまでの責任はとります」

という伝え方をしていたこともあり、出版社の方も、

「そんな対応をされたのははじめてだ」

と言ってくださったのです。
その後、たまたま東京出張があり、部下が代理でお菓子を持って出版社を
訪問したところ、担当編集者の方との交流が生まれ、現在でもいいお付き合
いが続いています。
その後、個人的にその方に助けられたことも多くあり、とても貴重な縁を
感じています。

どこでどんな縁がつながるのかは、わかりません。
だからこそ、その場しのぎなクレーム対応は命とりです。
逆に、最大限の対応をすれば、クレームさえも、宝となる縁になります。
いつでも誠実で、長いお付き合いができるような関係を築いていきたいも
のです。