Column
投稿日:2021年10月10日
人生のどん底に陥ると、心の思うままには動けなくなります。
わたし自身も、底の底まで落ちたときには、本当は断りたい仕事も、すべ
て引き受けました。それ以外の選択肢がなかったのです。
身も心も削って、社員からも「こんな仕事をするのですか?」と言われた
こともあります。「ごめんな」と答えながらも、心のなかでは「本当は自分
が一番したくないよ…」という心境でした。
いまなら、心からいいと思えない取引などしないのですが、当時は、「継
続は力なり」「成功するまでやり続ける」「我慢も美徳」という思考が強く、
会社を存続させることへの執着心もありました。
社員のなかには、車を売ってまでお金にしてきてくれる人もいました。
そこまでしてもらったことで、「踏ん張るしかない」と、責任感の名のもとに、
どんどん自分を追い詰めていったのです。
冷静に考えると、本来はやめどきをすぐに判断できますが、当時はそれが
できませんでした。
数々の失敗を繰り返し、動いても動いても、迷路に迷い込むように、苦し
い思いをし続けるという悪循環…。
どん底時代を思い出すと、いま普通の生活ができているだけでも、本当に
ありがたいことだと感じられます。
もし、わたしひとりで仕事をしていて、社員がいなかったとしたら、とっ
くに投げ出していたはずです。
もう二度と、どん底時代の生活には戻りたくありません。
ただ、いまがあるのは、間違いなくこれまでのおかげ。
踏ん張った分だけ、得られるものがたくさんありました。
いま、心豊かで穏やかに過ごせるようになっているのは、あの頃逃げなかっ
たからです。
あのとき越えられたのだから、いつだって自分は這い上がれる──。
どん底は、未来を生きる糧になるのです。
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